徴用工とは何か?日韓の対立点と1965年協定・最新動向を徹底解説
日韓関係のニュースに触れる際、長年にわたり最大の懸案事項として報じられ続けているのが「徴用工問題」です。テレビの報道やネットニュースで頻繁に目にするものの、「そもそも徴用工とは何を指すのか」「なぜ半世紀以上前の出来事が今なお外交問題として燃え盛っているのか」という根本的な疑問を抱えている読者も少なくありません。
この問題の背景には、第二次世界大戦下の過酷な労働実態のみならず、1965年に結ばれた国際協定の解釈、さらには韓国国内の司法判断と政治構造が複雑に絡み合っています。2026年現在の両国関係を正しく把握するためにも、複雑化した対立の構造と歴史的経緯を論理的かつ分かりやすく整理しておく必要があります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:徴用工問題の根幹は「1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みとする日本政府」と「不法な植民地支配に直結する慰謝料請求権は消滅していないとする2018年の韓国最高裁判決」の法解釈の根本的不一致にあります。
- 要点2:戦時中の朝鮮半島からの労働力動員は「募集(自由募集)」「官斡旋」「国民徴用令」の3段階に分かれており、法的性格や強制性の度合いが異なるにもかかわらず、韓国側では総じて「強制動員」として捉えられている点に認識のギャップが存在します。
- 要点3:尹錫悦政権による「韓国財団の肩代わり弁済(第三者弁済)」によって日本企業資産の強制現金化という最悪の危機は回避されたものの、原告側の一部受取拒否や将来の政権交代リスクなど、構造的な課題は依然として残されています。
【基礎から整理】今さら聞けない「徴用工とは」どんな問題?なぜ日韓の火種であり続けるのか
「徴用工問題」を極めて端的に説明するならば、戦時下の日本統治下にあった朝鮮半島から、日本本土の炭鉱や軍需工場などに動員された労働者(旧朝鮮半島出身労働者)に対する補償・賠償をめぐる日韓間の対立です。
この問題が解決しない最大の理由は、国家間の取り決めである条約と、韓国国内の司法判決が真っ向から衝突している点にあります。日本政府は1965年の日韓請求権協定において、日本から韓国へ無償3億ドル・有償2億ドル(計5億ドル、当時の韓国の国家予算の約1.5倍に相当)の経済協力資金を供与したことで、両国および国民間の財産・請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決された」という立場を一貫して崩していません。
しかし、2018年10月および11月、韓国の大法院(最高裁判所)が日本製鉄(旧新日鉄住金)や三菱重工業に対し、元労働者らへの損害賠償(慰謝料)支払いを命じる確定判決を下しました。韓国大法院は「1965年の協定は両国の政治的合意にすぎず、日本の不法な植民地支配や侵略戦争の遂行に直結した反人道的な不法行為に対する個人の慰謝料請求権までは消滅していない」という独自の論理を展開したのです。
国家間の約束である条約を遵守する立場から見れば、韓国最高裁の判断は国際法の基本原則(条約遵守義務)を揺るがす判決であり、韓国側の視点に立てば個人の基本的人権と過去の清算を重視した司法判断となります。この国際合意と国内司法の正義が正面衝突したことこそが、数十年にわたり日韓外交が激震に見舞われ続けている本質的な原因です。

一般に知られていない盲点と歴史的事実|「募集」「官斡旋」「徴用」の決定的な違い
一般の報道ではすべて「徴用工」と一括りにされがちですが、歴史的事実を検証すると、朝鮮半島からの労働者動員は時期によって法的位置づけと実態が明確に異なります。当時の歴史的経緯は、大きく以下の3段階に分かれています。
| 動員の段階 | 実施時期 | 具体的な手法と法的根拠 | 歴史的実態と検証 |
|---|---|---|---|
| 第1期:募集(自由募集) | 1939年9月〜1942年1月 | 日本の民間企業が朝鮮総督府の許可を得て現地で直接労働者を募集 | 賃金獲得を目的とした自発的な応募が中心。ただし好条件を誇張した宣伝やトラブルも一部存在 |
| 第2期:官斡旋 | 1942年2月〜1944年9月 | 朝鮮総督府の行政機関(地方役場など)が企業への割り当て・斡旋を実施 | 形式上は本人の承諾を要したが、行政組織や警察の強い働きかけがあり、事実上の強制を伴う事例が増加 |
| 第3期:徴用(国民徴用令) | 1944年9月〜1945年3月頃 | 国家総動員法に基づく「国民徴用令」が朝鮮半島出身者へ正式適用 | 白紙の令状により法的な義務として強制配置。拒絶すれば刑事罰の対象。1945年3月以降は関釜連絡船の途絶で実質困難に |
当時の日本内地では1939年時点で既に国民徴用令が適用されていましたが、朝鮮半島への全面的な適用は戦争末期の1944年9月から1945年3月頃までの約7ヶ月間に限られていました。1945年春以降は戦局の悪化に伴う海上封鎖や輸送難により、半島から内地への大規模な渡航自体が物理的に遮断されていたためです。
ネット上や一部の言論では「すべての動員労働者が最初から暴力的に拉致された」とする極端な言説や、逆に「全員が高い賃金を目当てに集まった完全な自由意思の出稼ぎ労働者にすぎない」とする一刀両断な見解が散見されます。しかし公文書や学術研究が示す現実は、初期の経済的動機による渡航から、戦況悪化に伴う国家権力による法的強制・過酷な労務環境へと段階的に移行していったという複雑なグラデーションを持っています。
【徹底比較】日韓の主張はどう食い違うのか?1965年体制と2018年大法院判決の対立軸
日韓両国が互いに妥協できない背景には、双方ともに国家としての法的根拠や歴史認識の正当性を掲げているからです。双方の主張の対立点を整理すると、以下のようになります。
| 論点 | 日本政府および企業の立場 | 韓国大法院(最高裁)・原告の立場 | 客観的な論点解説 |
|---|---|---|---|
| 日韓請求権協定(1965年)の効力 | 第2条第1項により、個人の請求権を含め「完全かつ最終的に解決」済み | 協定で対象とされたのは民事上の債権債務関係のみ。反人道的不法行為への「慰謝料」は含まれない | 条約の文言上は広範な解決を謳っているが、韓国司法は「不法支配への慰謝料」という新法理を提示 |
| 当時の供与資金の使途と責任 | 韓国政府が一括して補償を引き受ける前提で計5億ドルを提供。個人補償は韓国政府の国内責務 | 資金の多くはインフラや経済成長に転用され、個々の被害者の精神的苦痛は十分に癒やされていない | 韓国政府は朴正煕政権下で資金を浦項総合製鉄や高速道路建設に重点配分し、「漢江の奇跡」を達成した歴史的経緯がある |
| 日本企業の賠償責任 | 条約上の義務を果たしており、日本企業に対する韓国司法の賠償命令や資産差し押さえは国際法違反 | 侵略戦争に加担し過酷な労働を強いた企業には個別の法的責任があり、判決に従うべき | 日本製鉄や三菱重工業の韓国内資産(特許権や合弁株式)の現金化手続きが国際問題に発展 |
日本側にとって、国家間で条約を結び、巨額の経済資金を供与したにもかかわらず、半世紀以上を経て「司法の解釈」を理由に覆されることは、国際秩序そのものを否定される事態にほかなりません。外務省資料や過去の会談議事録を見ても、1965年の交渉過程で日本側が「被徴用者個人への直接補償」を打診したのに対し、韓国側が「国として一括して受け取り、国内での分配は自国政府が行う」と強く要望した経緯が記録されています。
一方、韓国側では2000年代以降の民主化の進展に伴い、独裁政権期に結ばれた条約の正当性を問い直す世論が台頭しました。特に軍事政権下で個人の権利が切り捨てられたことに対する司法の救済意識が、2018年判決のバックボーンとなっています。

【実態検証】生存者の手記・証言と日韓両国の世論が語る「埋まらない溝」
双方が主張する法論理の狭間で、現場にいた元労働者たちの生々しい記録は時として政治的な対立の道具として消費されてきました。当時の証言資料や手記を紐解くと、そこには現場ごとに大きく異なる苛酷な実情が浮き彫りになります。
例えば、九州の炭鉱や長崎の造船所に動員された元労働者たちの手記には、「落盤事故の恐怖と戦いながら、満足な食事も与えられず地下深くで掘削を続けさせられた」「逃亡を図れば激しい暴行を受け、家族への送金も強制貯金の名目で制限されていた」という悲痛な叫びが克明に綴られています。こうした現場の過酷さと民族的な差別感情の記憶が、戦後何十年を経ても癒えない怨念として原告運動の原動力となってきたことは紛れもない事実です。
その一方で、当時の給与明細や郵便貯金の通帳記録、現場監督者の日記などを検証すると、日本人労務者とほぼ同水準の給与が支払われていた現場や、終戦時の混乱によって未払いとなった給与を供託金として法務局に保管していた企業の記録も多数確認されています。
こうした歴史の複層性に対し、日韓の世論は分断を深めてきました。日本のSNSや世論調査(報道各社の定期調査)では、「すでに解決済みの問題について、韓国側の政権が変わるたびにゴールポストを動かされることには耐えられない」という強い拒絶感が約7割から8割を占めています。対する韓国国内でも、歴史問題における正義の実現を求める革新派と、経済や安全保障の現実を見据えて未来志向の関係を望む保守派との間で、激しい分断と摩擦が続いています。
【2026年最新動向】尹錫悦政権の「肩代わり弁済」の現在地と資産現金化の回避劇
泥沼化していた徴用工問題が決定的な破局を免れた転換点は、2023年3月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が打ち出した「第三者弁済(肩代わり弁済)案」でした。
この解決策は、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、1965年の請求権協定資金の恩恵を受けて成長した韓国企業(POSCOなど)からの寄付金を原資とし、日本企業に代わって大法院判決の確定賠償金と遅延利息を原告側に支払うという仕組みです。これにより、日本製鉄や三菱重工業の韓国内資産が競売にかけられて売却されるという「日本企業資産の現金化問題」による最悪の外交断交危機は、寸前のところで回避されました。
この決断を機に、日韓両国は首脳が定期的に往来する「シャトル外交」を再開させ、安全保障分野(日米韓防衛協力の強化)やサプライチェーン(半導体素材の輸出管理見直し)における関係改善へと大きく舵を切りました。
しかし、2026年現在の現場を直視すると、この解決策は「完全な決着」ではなく「危機の凍結」にすぎないことが浮き彫りになっています。
大法院で勝訴した原告やその遺族のうち、複数の原告側は「日本企業からの謝罪と直接の賠償金でなければ受け入れられない」として財団からの金銭受取を断固拒否しました。韓国政府は受取を拒む原告に対して資金を裁判所に預ける「供託」手続きを試みましたが、各地の地方裁判所が「被害者本人の明確な反対意思がある場合、第三者弁済の供託は無効である」として不受理の決定を下す事例が相次ぎました。これにより、一部の法的手続きは今なお韓国内の裁判所で係争状態にあります。

日韓関係の深層分析|法治の国際ルールと歴史的ナショナリズムの共鳴関係
徴用工問題がこれほどまでに拗れる本質的なメカニズムを、社会心理学および比較法制度の視点から分析すると、日韓両国が抱く「国家の基本原理」の差異に行き着きます。
日本側が最優先視するのは、法治主義と国際協定の安定性(パクタ・スント・セルヴァンダ:合意は守られねばならないという原則)です。近代国家間の約束が内政事情や司法判断によって事後的に覆されることを認めれば、いかなる条約も締結できなくなるという危機感があります。
一方の韓国側において強く機能するのは、民主化闘争の歴史に裏打ちされた「実質的的正義」の追求です。韓国社会では、1987年の民主化宣言以降、軍事政権が過去に行った決定や妥協を「国民の意思を反映していない不正義」として司法が見直す動きが強力な社会的共感を得てきました。韓国司法にとって、個人の人権侵害に対する救済は、国家間の形式的な外交文書よりも上位の法益として捉えられがちです。
【プロの結論】感情論を排して構造的リスクを見極める判断基準
この対立からビジネスパーソンや政策分析者が引き出すべき本質的な教訓は、「政権交代によって外交の基盤が覆るカントリーリスクの構造を理解すること」です。
尹錫悦政権による第三者弁済という政治的決断は、現実主義的な外交判断として高く評価される一方で、韓国国内では野党(共に民主党など革新系)から「屈辱外交」との激しい批判を受け続けています。韓国の政治システムは5年単任の大統領制であり、将来的な政権交代が起きた場合、現在の肩代わり弁済方針が見直されたり、新たな特別法が制定されて再び日本企業の責任が追及される可能性をゼロにすることはできません。
したがって、この問題をウォッチする際には、単に「両国関係が改善したか悪化したか」という二元論に惑わされるのではなく、韓国の裁判所における供託不受理訴訟の行方、財団の資金調達状況、そして韓国国会における与野党の勢力図という3つの指標を冷静に定点観測することが極めて重要となります。
【徴用工とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:なぜ日本政府は元労働者への個別の賠償金を支払わないのですか?
A1:日本政府は1965年の日韓請求権協定締結時に、当時の韓国の国家予算を大きく上回る計5億ドルの無償・有償資金を供与しました。その際、個人への補償は韓国政府が責任を持って行うことが日韓間で正式に合意され、協定上「両国および国民の間で完全かつ最終的に解決した」と明記されているためです。二重の補償に応じることは、国際条約の効力を根底から覆すことになると日本政府は説明しています。
Q2:もし日本企業の資産が韓国内で現金化されたらどうなるのですか?
A2:日本製鉄や三菱重工業などの特許権や株式が競売で強制売却された場合、日本政府は明白な国際法違反とみなし、関税引き上げ、特定のビザ発給停止、駐韓大使の召還など強力な報復(対抗措置)を発動する方針を示していました。これは日韓の経済・安全保障関係を冷戦期以降最悪の断絶へと追い込む「越えてはならない一線」とされています。
Q3:韓国財団による「肩代わり弁済」によって、問題は完全に終わったのですか?
A3:危機的な破局は回避されたものの、完全な解決には至っていません。原告の一部が金銭の受取を拒絶して法廷闘争を継続しているほか、韓国の国内法に基づき裁判所に供託する手続きをめぐって司法判断が分かれています。さらに将来の政権交代によってこの方針が覆されるリスクを抱えており、構造的な火種は依然として残されています。
まとめ:徴用工問題の本質を理解し未来志向の関係を築くために
徴用工問題は、単なる過去の歴史的事実をめぐる議論にとどまらず、「国家間の条約による安定」と「個人の人権救済」が衝突した極めて重い国際法上の課題です。
1965年の日韓請求権協定が果たした役割、2018年の韓国大法院判決がもたらした衝撃、そして尹錫悦政権による第三者弁済という苦肉の政治決断まで、一連の経緯を俯瞰すると、感情論だけでは解決できない根深い構造が見えてきます。2026年以降の東アジア情勢が激動を続ける中、互いの法治の論理と国内事情を冷静に見極め、事実に基づいた現実的な対話を積み重ねていくことこそが、日韓両国に求められています。 (出典: 徴用 工 と は(Yahoo!ニュース))